映画・音楽ファンがリラックスして楽しめる心斎橋・南船場のバー
Almost Famous のブログ。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3』

映画

今回は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3』(監督・脚本:ジェームズ・ガン)について、音楽ファン的な視点強めで書いてみました。
少しネタバレを含みますのでご了承を。

マーベルの人気シリーズ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の第三弾であるこの映画が僕は大好きである。
2023年のベスト1ムービーであるのは勿論のこと、オールタイムベストでもトップ10に入れたいほどだ。

このシリーズはとにかく音楽が最高。
前2作も素晴らしかったが、特に今作はさらなる極みだと言いたくなる。
選曲とその使い方の両面において。

冒頭短い回想シーンの後、今作の主人公ともいえる(シリーズ本来の主人公はクリス・プラット演じるピーター・クイル)アライグマのロケットがレディオヘッドの「クリープ」を聴きながら口ずさむシーンから物語は始まる。
自分の欠けている部分を自覚しながら、そうでない自分を切望する自虐的な歌がロケットの心情をダブらせるようであり、この後の物語の展開を大きく予感させるものでもあった。

このシリーズをずっと観てきて、大きな期待を持ち公開日初日に行っていきなり大好きなこの曲によるシーン、僕はそれだけで泣きそうになってしまった。
その後物語は優れた楽曲が効果的に、それもふんだんに用いられながら進んでいく。
音楽使いの素晴らしさはこのシリーズの大きな魅力である。

劇場公開からそれ程長くはない期間を経て配信でも観られるようになり、僕は早速再び観ることにした。
すると劇場で観たときと同じところでまたしても泣いてしまった。
劇場の大きなスクリーンと優れたサウンドに到底及ばないノートPCで観たのに。
少なくとも僕にとってはここが一番琴線に触れるところなんだろう。
そのシーンは、フローレンス・アンド・ザ・マシーンの「ドッグ・デイズ・アー・オーヴァー」が流れみんなが踊るシーン。
“失意の日々は去った”と高らかに歌われる祝祭感に満ちたシーンだ。

僕は映画館で観ている時、思わずその場で立ち上がり両手を挙げて踊りたい欲求に駆られていた。
自制心というか、ある意味くだらない常識がその気持ちを抑え、脳内で踊ることによりその場をやり過ごしたが、ほんと凄く踊り出したい気分だった。
このシーンでの「ドッグ・デイズ・アー・オーヴァー」は、最高のアンセムであり最高のダンス・ミュージックだと思った。
解放されていたのだ、映画の中の人々、そしてきっと僕を含めた映画を観ていた多くの人たちも。
だが解放されてはいても、抱えた問題が解決し未来はバラ色だ!、という事ではないはず。
問題は解決していないが(もしくはひとつの問題は解決したが、まだ他の問題は残ったままだとか)一時的に解放され弾けているだけに過ぎない場合がほとんどだろう。
映画の中の登場人物も、一時的な達成感は感じていただろうが、残された問題を抱えたまま。
だからこそみんなすぐに次へのアクションを起こすことになる。
アンセムに身も心も委ね踊っているとき気分は最高だ。
しかし、それは本能的な快感であって、精神的な満足が同居しているとは限らない。
辛く泣きそうな状況でありながら踊り狂う時もある。
その時こころは高揚しているはずだ。
つまり最高のアンセムやダンス・ミュージックに触れている時でも、幸せになっている状態ではないかもしれないということ。
楽しいから歌ったり踊る、とは限らないのである。
歌い出し踊り出す理由、それは人それぞれ実に多様なはず。
そして、結局のところアンセムやダンス・ミュージックはちょっとした元気の補給という意味合いでしかないように思える。

ガーディアンズというチームはどこにも属することが出来ない、ハグレものたちの集まり。
冒頭の「クリープ」、口ずさんでいるのはロケットだがガーディアンズのメンバーみんなのことを表した歌となっている。
クリープなハグレものが一時的な魂を爆発させた「ドッグ・デイズ・アー・オーヴァー」が流れる祝祭のシーン、世界中のクリープなハグレものたちは涙し踊り出したくなったことだろう。

踊ることにずっと否定的だったドラックスが踊っているのを観た時、たまらない気持ちになった。

また映画終盤のシーンで、新チームとなったガーディアンズがある星の住民を助けるため、その住民を襲ってくる生物を退治することに。
そこで、ブリトニー・スピアーズとコーンが好きだと言うファイラが「ちょっとかわいそう」というのだが、ロケットは「仕方ない」といってそれら生物たちに襲いかかる。
いかなる生き物の命も尊く大事なんだとでも言うような登場人物たちの行動を見せてきた物語の最後にだ。
このオチが、僕をこの映画への愛をさらに強固なものにした。
結局なんだかんだ言っても、自分たちの都合で他の生物を殲滅したりもするのである。
このエピソードを盛り込んだことに、シリーズ3作で監督・脚本を務めたジェームズ・ガンへの僕の信頼はより強いものとなった。

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME3』は、単に音楽が素敵な優れたアクション映画というだけではない。
そこにはみんなの内面を映し出す、心に響く物語がある。
これは最高の映画だ!

Follow me!

PAGE TOP
タイトルとURLをコピーしました