前回の『天使のくれた時間』に続いて今回もクリスマス映画。
採り上げるのは『私をスキーに連れてって』。
1987年公開のこの映画だが、それまでの日本映画にはなかったエポックメイキングな作品だと僕は思っている。
全てではないにせよ、当時の僕の印象では、
日本映画は暗い、情緒的、憎しみや悲しみ
がまずイメージとして前面にきて、かつエンターテイメント性に乏しい、というものであった。
もちろん全てではない。
『七人の侍』や『隠し砦の三悪人』など世界に誇れるとても素晴らしい、含みも併せ持ったエンターテイメント作品もある。
でも一般的なイメージは、僕以外の人にも同じような感覚が当時はあったんではないだろうか。
少なくとも日本映画に精通していない若い人にはそうだったと思う。
そこで登場してきた、ホイチョイプロダクションによるこの映画。
画期的だった。
当時の若者のリアルな感覚をポップに取り入れた素晴らしいエンターテイメント作品となっている。
ゆえに若者を中心に大ヒット!
僕もそれまでの日本映画のイメージを覆すようなポップなこの作品に魅了された。
まだ携帯電話が一般化していないこの時代、劇中で活躍する無線に憧れた記憶が。
映画が大ヒットした後スキーブームが訪れた。
実はこの映画の前からブームの兆しはあったらしい。
しかし僕は映画を観たとき、スキーをしていなかった。
観たあとも特に始めるということはなかった。
映画にはとても惹かれたが、スキーそのものには特に惹かれなかったのだ。
つまり、スキーに興味が持てなくても楽しめる映画だということ。
ユーミンの「サーフ天国、スキー天国」流れるオープニングのシーンは、明らかにあの時代の若者の空気を捉えていた。
こうありたいという希望も込めた。
半歩先にある希望、そういうものに人は目がない。
若いとよけいである。
その他劇中で用いられるユーミンSONGの数々が、とても素敵。
洋画に比べ日本の映画はポップミュージックの使い方が下手だと思っている。
しかし、この映画は非常に効果的にセンス良く用いているのだ。
「A HAPPY NEW YEAR」や「Blizzard」が流れるシーンは、特に大好き。
恋の胸キュンな感じが、たまらない。
胸キュンって言葉、今の人は使わないのかな?
聞かないもんな、そんな言葉、最近は。
いわゆるバブル期始まりの頃の作品。
この映画の空気感は、今の時代にはないものだ。
今の若い人が観るとどう感じるんだろう。
ちょっと気になる。
バカバカしいと思ったりするのかな?
若者じゃない僕は、今の若者が社会の中で何をどのように感じ考えながら生きているのかは、正確に分かる事が出来ない。
でも、多分これは今の若者の空気を表してるんじゃないかというように感じる日本映画はある。
そしてそれは『私をスキーに連れてって』とは全く違うものだ。
当たり前だろう、若者を覆う時代そのものが全く変わってしまっているのだから。
オジサンな僕は、今もこの映画が大好きだ。
ノスタルジーというより、この空気感がしっくりくるからだろう。
やっぱりあるのよ、悲しいかなジェネレーションギャップって。