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『リコリス・ピザ』 走るシーンが素敵なポール・トーマス・アンダーソン監督の青春映画

映画

ある意味イタイけど青春なんてそんなもの、と描いて見せたポール・トーマス・アンダーソン監督による『リコリス・ピザ』。
素敵な映画だ。

今年もアカデミー賞の発表が近づいてきたが、昨年の作品賞にノミネートされていたものの、日本での公開は授賞式後となった『リコリス・ピザ』。
また今年も、ケイト・ブランシェットの『TAR』やルーニー・マーラの『ウーマン・トーキング』などが授賞式後の日本公開となる。
仕方ないことだけど、待ち遠しくてイライラするぞ。

それにしても、ポール・トーマス・アンダーソン監督の新作くらいは、ほぼ同時公開とはいかなかったのか?
ちなみに、僕が一番好きな彼の監督作は『ブギーナイツ』。

この映画も『リコリス・ピザ』と同じく、ポール・トーマス・アンダーソンの地元であるLAのサンフェルナンド・バレーでの物語。

さて『リコリス・ピザ』であるが、
これは俳優でもある15歳の高校生男子と、カメラ助手をしている25歳女性との恋物語。
15歳の男子ゲイリーを演じるのはクーパー・ホフマン。
今作が映画デビュー作となる。
父親は、ポール・トーマス・アンダーソン作品にいくつも出演していたフィリップ・シーモア・ホフマン。

25歳女性のアラナを演じるのは、これまた今作が映画デビューとなる、アラナ・ハイム。
ハイム3姉妹によるバンドHAIMのメンバー。
洋楽好きだと、音楽の方でその存在を知っている人は多いだろう。
彼女たちのミュージック・ビデオの多くを手がけているのが、ポール・トーマス・アンダーソンだったりする。

ゲイリーはふとした出会いからアラナに恋をするが、恋愛関係になりそうになるも、そううまく物語は進んでいかない。

15歳ながら俳優であり、ビジネスにもめざといゲイリーだが、年齢からして当然ながらガキっぽさ全開。
心が決まらないアラナ。
自分の人生の立ち位置がうまくハマるポジションを見つけられないままの彼女は、不安定な状況で生きていた。

映画の中には、実際に存在した映画人をモデルとした登場人物が出てくる(主役の二人にもモデルがいる)。
ブラッドリー・クーパーやショーン・ペンといった大物俳優がそれらの役で出てくるが、この人たちはとにかくぶっ飛んでいて、出来れば関わりたくないようなタイプである。

恋愛物語であるが、予告編からイメージされるような心地よいロマンティックな展開にはなかなかならない。
起承転結のあるガチっとした物語というより、とっちらかった感のあるエッセイのような作りになっている。

この映画の特徴として、主人公ふたりの走るシーンがいくつも出てくる。
これが良いのだ。

この映画とは関係ないけど、僕は走る人が好き。
もう少し言うと、走るべき時に、足がつい動き出してしまう、走り出してしまう、
そういう人が好きなのだ。
そして、自分もそういう人でいたいと思っている。

なので、この映画を僕が好きなのは、そういうことが関係しているかもしれない。

またあるシーンで登場人物のひとりがアラナに
「みんなクソだよ」
と言う。
そこにこの映画の、ある意味すべてが詰まっているのではないかと僕は思った。
いろんな意味で、みんなクソなんだよ、くだらないもの愛すべきものそれら全部含めて、世界はクソなもので成り立っているのだ。

なお映画の中で出てくるアラナの家族は本当のハイム一家。
そしてアラナの母は、ポール・トーマス・アンダーソンが子どもの時に彼の美術の先生だったという。

同じ地域(サンフェルナンド・バレー)で育った故の、ちょっとびっくりな関係性。

劇中流れる音楽はこの時代前後によく聴かれた音楽が用いられており、サントラもオススメです。


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